blue snows

1月8日(後編)

 

 

 ……川に沿った道。
 車両進入禁止の標識を曲がる。
 そのまま二区画前進。
 左に曲がる。
 一…二…三軒目。
 やわらかい色の門灯の灯る家。
 玄関には『水瀬』の表札。
 ドアを、開ける。
「……………ただいま」
 言いながら、倒れるように玄関の縁に座り込んで靴を脱いだ。
 足が棒みたいになっている。
 …きっと明日筋肉痛。
「おかえり〜。待ってたよ〜」
 ぱたぱたと廊下をやってくるのは、勿論雪也である。
 ……構図的に、酔っぱらって帰った旦那を出迎える新妻ってトコかしら。そんなものを想像してもらえると結構近いような気がする。
「…ただいま」
「おかえり。…今日もAくんと走ってたんだって?」
「……どうして知ってる訳?」
「帰りに薫に会ってね、その時教えてもらったんだよ。相沢ちゃんがハーフっぽい男の子と一緒に、たい焼き屋の親父から全力逃走してたぞって」
「…たい焼き屋のおじさんだってことまでバレてる訳ね……」
「みたいだね」
 にこにこにこ。
 あたしたち(当然、たち、は雪也のコトだけど)が犯罪者であることが判っているのかいないのか、雪也は随分ご機嫌だった。
 文面だと判らないかも知れないけど、今の雪也は、いつもにも増して満面の笑顔だし、声も微妙に(…元が間延びしてるから判りにくいけど、慣れれば判るくらいには)弾んでいる。
 …ま、あたしには関係ないだろうけど、一応。
「何かいい事でもあったの?」
「え? どうして?」
「随分ご機嫌だから」
「…そう?」
「間違いないわよ」
「…そうだとしたら、多分、今日の夕飯にシチューを作ったからだと思うよ」
「……」
「…僕、シチュー大好きだから」
 つくづく判りやすいな、と思う。
「……」
 もし雪也が無邪気に嘘をつくようになったら。
「うん。きっとそうだよ」
 その時、あたしは…、
「…ゆーこちゃん?」
「ん?」
「シチューあっため直すからさ、その間に上行って着替えてきて」
「…判ったわ」
「うん。待ってるよ」
 ……最後ににぱっと笑みを残して、雪也、踵を返す。
 翻ったエプロンがほんの少し風を起こして、あたしの頬を、撫でた。
 とっとっとっとっとっ。
 遠ざかっていく足音。
 独りになる、あたし。
 ………夕食を摂った後、あたしはすぐ眠りについた。
 歩くんに振り回されて疲れてたのもあるけど、それ以上に。
 何も考えたくなかったから。
 

 

Wiedersehen am folgenden Morgen.

 

 

SSの一覧に戻ります  和馬にメールを送ります  中編(3)へ  次の日へ(執筆中)

 

 


お久しぶりです、マジで。

青雪の更新は実に三ヶ月半ぶりです。

しかもこの回、一時間弱で書いたんですよ〜。

つまり…(滝汗)

 

しかし、短いです。

ホントに筆を執るのが久しぶりだったので、どういう話だったか自分でも憶えてません(爆)

慣れるまで…ちょっと、待ってください(汗)

01/6/4  橘 和馬